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あらためて知る、雑穀の力

久留米市郊外に広がるもち麦の畑

雑穀米の提携生産者、ベストアメニティ株式会社は、福岡県久留米市にある。焼酎「とんでんなか」や甘酒も契約農家が栽培する雑穀で造り、旧家より譲り受けた築180年以上の古民家では温泉旅館も運営、訪れた人がくつろいだ時間を過ごしている。

九州産十六種類の雑穀米

ベストアメニティグループ代表の内田弘さん。「未来の食を考える時、雑穀は重要です」

提携のきっかけはタケノコ

生活クラブとベストアメニティ株式会社の提携は、「たけのこ水煮」で始まった。10年ほど前、タケノコの加工品を製造する食品会社の間で、中国産のタケノコを使っているにもかかわらず、国産と表示して販売する偽装表示が横行したことがある。生活クラブは国産のタケノコを原料に生産する信頼のおける生産者を探していた。

その頃、荒廃がすすむ竹林の現状を憂え、再生して資源として活用することを考えていたのがベストアメニティ。竹製品の生産者の高齢化、後継者不足がすすんだことと、便利なプラスチック製品が使われるようになったため、日常的に使う竹製のざるやかごなどの生産が減少、竹林を手入れする人も少なくなり、成長が早い竹は雑木林に侵入し、日陰を作るなど、他の植物にも影響を及ぼすようになっていた。

ベストアメニティグループ代表の内田弘さんは、同じ福岡県の八女やめ市にある竹林を譲り受け整備を始めた。竹炭や木酢液の開発も視野に入れ、炭焼き窯も用意した。

竹の有効活用を考えていた内田さんは、知人から生活クラブを紹介されてその理念を知り、「たけのこ水煮」の取り組みを決めた。「自社にはタケノコを加工する工場がありませんでしたが、来てくださった生活クラブの方たちの熱い思いにかれて専門の工場を作りました」。現在は福岡県や熊本県産の孟宗竹を原料に加工している。

「ふかほり邸」の敷地内の雑木林の中、小道が続く

古民家「ふかほり邸」の母屋

母屋の高い天井にある重厚な梁(はり)

母屋にあるかまど。毎朝スタッフがご飯を炊く

雑穀で造る焼酎

季節の花が生けられた落ち着いた雰囲気の食事処

見直される雑穀の力

内田さんは20代の中頃、勤めていた会社で責任のある仕事に就き、食事や飲酒にあまり気を使わない生活を続けていた。健康には自信があったが、頸椎けいついと腰を痛め病院に行ったところ、医者から「あんたん病気は薬じゃ治らん」と言われた。「食生活を見直すことが必要でした。1カ月ほど養生しているうちに生活を変えたいと思うようになりました」と内田さん。

食に関わる仕事をすることを決め、1990年に自然食品を販売する「ベストアメニティ株式会社」を設立した。最初はシイタケ、昆布などの乾物や豆類などを取り扱っていた。その後鹿児島県霧島市で、キビやアワなどの雑穀を作っている農家と出会い、昔から家族の健康のために栽培していると知り、何種類もの雑穀をブレンドする「雑穀米」を作ろうと考えた。

雑穀は、イネ科のコメやムギ以外の穀物のことで、キビ、アワ、ヒエなどがある。日本では5千年も前の縄文時代から栽培されて、昭和初期までは各地で主食のひとつとして食べられていた。ところが、60年代以降、コメが主食の主流になると生産が減り、各地で伝えられてきた雑穀文化がどんどんなくなっていった。

しかし90年代に入ると、コメやムギが食べられない食物アレルギーを発症する人が増え、代替食のひとつとして知られるようになる。また、カリウムやカルシウム、鉄などのミネラルと食物繊維が豊富であることから、さまざまな料理に使われるようになった。

「雑穀を売り出した当初は『こんなものが倉庫にあったら異物混入で売り物にならない』と米屋さんでは異物のように言われていました」と内田さん。ブレンドする雑穀の栽培を農家に依頼しても、「こげなもんが売れるんじゃろか」となかなか作ってもらえなかった。

それでも、全国の雑穀を栽培する農家を訪ね、健康的な食生活のためには雑穀が必要であることを根気よく話しながら、直接提携し関係を作ってきた。

仕入れた雑穀は自社の低温倉庫で保管する。雑穀のそれぞれには独特の香りや味があり、日向臭さが残るものもある。雑穀米が体に良くてもおいしくなくてはと、種類や配合を変えながら何度も炊いて試食を繰り返した。そうして完成したのが「九州産十六種類の雑穀米」など、さまざまな雑穀をブレンドした雑穀米だ。

雑穀で自給を高める

雑穀は寒さや干ばつに強く、病気にもかかりにくい。種としても生命力があると言われている。収穫後の長期保存も可能だ。しかし、食料として育てるには経験や技術がいる。

久留米市の農家、農事組合法人「e-FARM 久留米」の城戸紀彰さんは、最初は苦労の連続だったという。ハト麦は収穫できるまで育たず、ヒエも田んぼの雑草のイヌビエと違って弱く、収穫も専用の機械がなく苦労した。

「穀物の収穫は、1年に1回です。新しく栽培を始める時は勇気がいりますよ」と言いながらも、経験を積む中で栽培技術も習得していった。

現在、大麦、はだか麦、もちキビなどを栽培している。「父親たちに教わりながら仲間といろいろな雑穀の栽培に挑戦していきたいです」と頼もしい。

ベストアメニティはこれらの国産の雑穀を使い、焼酎、甘酒、みそなども製造している。「全国の提携農家といい関係をつくりながら、雑穀のよさをひろめ、国内自給を高めていくことが自分たちの目標です」

農事組合法人「e―FARM 久留米」の城戸紀彰さん。「雑穀の種は手に入れるのが難しいので自家採取しています」

古民家を宿に

内田さんは、食の他にもう一つ大切にしていることがある。忙しい日常を離れて、体や心をゆっくりと休ませることができる空間だ。

11年前、江戸時代から180年以上続く家屋と4千坪の土地を地元の旧家から譲り受けた。居心地のいい空間をたくさんの人に利用してもらおうと、敷地内に宿泊施設を作った。もともと使われていたはりや柱、建具などはそのまま使い、壁は漆喰しっくい、塗装は柿渋など自然の素材だ。母屋を改築し5棟の離れを造り、それを「ふかほり邸」と名付けた。

クヌギ、カシワ、ヤマモモ、ゲッケイジュなどの雑木林や植え込みは自然にあるように作られ、野菜畑や鶏を飼う小屋もある。納屋だったところは図書室となり、囲炉裏いろりも置かれている。

「最初に来た時、とにかく寝心地が良かったんです。それを多くの人にも感じていただきたいと思いました。新緑の季節は、ここの空気が緑色に見えるようですよ」

古き良きものが、時が静かに流れる空間の中で守り伝えられている。

撮影/田嶋雅已    文/本紙・伊澤小枝子

ふかほり邸


螺鈿(らでん)が施された蒸し器

「ふかほり邸」のチーフ、石橋友里子さん。江戸時代は庄屋さんが住んでいた古民家で、来客をもてなす
福岡県久留米市内から車で20分ほど。筑後平野が広がるのどかな田園に、雑穀米の生産者、ベストアメニティ株式会社が所有する旅館「ふかほり邸」がある。大きな樹が茂る4千坪の敷地に母屋と5棟の離れが点在し、小道をたどると、山里の雑木林に迷い込んだようだ。

ヤマモモやクルミの木のこずえで鳥がさえずる。高さが17メートルもあるムクロジは秋になると、硬くて黒い種を持つ実をつける。羽根つきの羽根のおもりはこの種を使う。ふかほり邸のチーフを務める石橋友里子さんは、「このように大きなムクロジは珍しいんですよ。漢字では『無患子』と書き、子どもに実を持たせると病気にならないといわれています」と教えてくれた。ふかほり邸のシンボルマークは、ムクロジの種がついた羽根をかたどっている。

全国にあるベストアメニティの店「ゆずり葉」の名前も庭にあるユズリハをもとにつけた。昨年亡くなったふかほり邸の持ち主が、50年以上も前に植えた木だ。落葉樹だが新芽が出て新しい葉っぱができてから古い葉が落ちる。「まるで次の世代へと命を譲っていくようです」と代表の内田弘さん。

雑木林が庭の一部となって眺められる離れにつけられた「なぎ」「ひめしゃら」「ゆすらうめ」なども敷地内にある樹木の名前だ。8名まで宿泊できる「なぎ」は、3世代が集まったり、気心の知れた友人同士が集う場所として利用される。露天風呂にも引かれている敷地内に掘り当てた温泉は、ペーハーが9.7もあるアルカリ単純温泉だ。神経痛や筋肉痛、疲労回復に効き目がある。

ふかほり邸の開業当初から働いている石橋さんは、「新築の時から自然の畳のにおいや木の香りがして、とても落ち着く空間でした。仕事をしていても癒やされます」と、居心地の良さを感じているという。

ここでは、古くからあるものを大切にする心に触れ、長い時間をかけて刻んできた歴史を語る空間に身を置くことができる。

雑穀をふんだんに取り入れた食事をし、くつろいだ時間を過ごして玄関先で見送られた人たちは、ふかほり邸を再び訪れる時、「ただいま」と言って母屋に入ってくるそうだ。

撮影/田嶋雅已    文/本紙・伊澤小枝子
『生活と自治』2019年5月号「これに賭ける!」を転載しました。

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