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「顔のみえる関係」がつなぐ漁業の未来 生活クラブ岩手「重茂パック」

共に海を守りたいとの思いから始まった、生活クラブ岩手と岩手県宮古市、重茂漁業協同組合との「重茂パック」。重茂漁協は、生活クラブ連合会のワカメの提携生産者だが、この試みは岩手単協独自の活動だ。年に4回、前日海で取れた魚介類が宅配便で直接、組合員宅に届く。パックを通じて、漁業者と食べる人の交流は深まり、震災復興も経て、新たな可能性につながっていく。

地元の海から直接届く

「重茂パック」を受け取る盛岡市の湯下さん一家。左から道雄さん、長女の真璃子さん、真由美さん。重茂漁協の後川良二業務部長によれば、前日季節外れのサワラが定置網に入り、大盤振る舞いになったとのこと。価格の半分以上は冷蔵宅配料で、内容はその日によりさまざまだが、この日は大当たりだったようだ

「これはすごいですね」
宅配便で届いた発泡スチロールの箱を開け驚きの声を上げたのは、岩手県盛岡市に住む生活クラブ岩手の組合員、湯下真由美さん一家だ。この日、同県宮古市の重茂漁業協同組合から届いた箱の中には、前日水揚げされたばかりのサワラがまるごと2尾入っていた。

生活クラブ岩手では年度初めにチラシを配布、夏から秋にかけ年4回決められた日に届く「重茂パック」の登録者を募る。基本は年間登録だが途中からの申し込みもできる。送料込みで1回2千円だ。

湯下さん宅では、魚好きの夫、道雄さんがこのチラシに目を止め、今回初めて申し込んだという。成長期にある長女の真璃子さんに良質なカルシウムを多くとらせたいとの思いもあった。

「県内地元の漁協から直接届くなんて新鮮でいいなと思ったんです。宮古まで行って買ってくる機会もなかなかないですし」と道雄さん。これほどのサワラは魚屋でも見たことがないと感心する。

その大きさや形にどう食べたらいいのかと戸惑う真由美さんに、この日、取材に同行した生活クラブ岩手の副理事長、四戸美恵さんがすかさずアドバイスする。「まずは刺し身で。サワラは身が軟らかく形は崩れやすいけれど鮮度がよければ絶対刺し身がおいしい」
生活クラブ岩手理事長の石井智恵子さん
その後は、切り身にして冷凍すればしばらくは食べ続けられる。「昆布締めもおすすめ」と四戸さん。さくにおろして昆布ではさみ冷蔵庫で1日おけば、身が締まってうまみも増す。四戸さんは重茂パック開始当初からの組合員。まるごと届く魚に戸惑う組合員には消費委員会活動を通じ、さばき方教室や「新巻鮭あらまきざけ」講習会を開催するなど、その普及につとめてきた。

現理事長の石井智恵子さんが重茂パックを利用するようになったのは加入後しばらくたってからだ。最初は不安もあったが「ベテラン組合員の方から新巻鮭つくりを教えてもらって、見よう見まねでなんとかなりましたね」と話す。

共に海を守る

左から生活クラブ岩手副理事長の四戸美恵さん、重茂漁協参事の前川清さん、業務部長の後川良二さん

「もともとは青森県六ケ所村の核燃料再処理工場の本格稼働を阻止しようと、県内の提携生産者、重茂漁協によびかけたことがきっかけでした」と生活クラブ岩手の専務理事、熊谷由紀子さんは振り返る。2006年、同工場の試験稼働の際、放射性物質を含む廃液が太平洋に排出され沿岸には大きな不安が広がった。重茂漁協は、生活クラブのよびかけに応え、翌年の定期総会で本格稼働反対を決議する。重茂漁協の業務部長、後川良二さんは当時の思いを「海が汚染されたら代々受け継いできた資源がだめになるという危機感がありましたね。海はつながっているから、ひとごとではなかった」と話す。

海を守る運動を共に進め、月に一度のペースで重茂に足を運ぶうちに、熊谷さんたちの中に「ワカメだけでなく重茂のものを丸ごと食べたい」という思いが湧き上がる。こうして2007年に始まったのが重茂パックの実験取り組みだ。翌年には本格実施に至るが、天候に左右され漁協に負荷がかかるとの懸念から2010年にいったん中止した。

だがその翌年、東日本大震災が発生、重茂漁協は定置網漁船9隻が流されるなど大きな被害を受ける。このとき、全国の組合員にカンパを募り3隻の定置網漁船の新規購入費用を寄付したのが、生活クラブ連合会だった。生活クラブ岩手は地元だけに、カンパにとどまらず復興支援の活動に力を注いだ。物資支援やワカメの袋詰めの作業支援などを進めてきたが、最終的には、やはり食べ続けることが復興を支えるとして、重茂パックの再開を決めた。

「本当にありがたかった。この新しい船で取った魚で何か組合員に提供したいとつくったのが『復興サバ缶』です。岩手単協の重茂パックもこの船で取れた魚を送っています」と後川さんは振り返る。

再開した年には「カンパ金で贈った第二与奈丸でとれたサケを食べよう」とのよびかけで、秋鮭、いくらなどを取り組み、196人が参加した。その後、サケの漁獲が減少したのでその時水揚げされたものとし、海が荒れれば欠品とするなど、臨機応変な対応で取り組みを継続、現在も毎年60人前後の登録で続けている。

交流から未来へ

年4回の重茂パックの一方、生活クラブ岩手では、重茂漁協が毎年開催する「味まつり」を後援、大勢の組合員が参加して漁協との交流を深める。

「交流会で互いの顔がわかるようになるとサケが届けばあの船の漁師さんだと顔が思い浮かびますよ」と熊谷さん。昨年は、漁協青年部の若者から思いがけない話も聞いた。

「生活クラブが寄贈した漁船の進水式の様子がYouTubeにアップされていて、震災当時中学3年生だった彼は、それを見て感動し、重茂で漁師になろうと思ったと話してくれたんです。青年部内では今も、あの時の支援があったから漁が続けられたと繰り返し話されているそうです」

全国の漁業者の高齢化は年々進んでいる。重茂漁協は比較的若い方だが少子化の影響もあり後継者不足には頭を悩ませる。それでも熊谷さんは「食べる側とのこうした関係が、若者の励みになり漁師を志す力になったことはうれしい。私たちにとっても未来への希望につながります」と話す。

重茂パックは「そのとき海にあるものをいただく」のが基本だ。「来るもので海を知り、ないものねだりはしない。何が来てもおいしく食べる最低限の技術はみんなに広げます」と副理事長の四戸さん。理事長の石井さんは、届いたときに重茂の海や漁業者に思いを寄せ、資源や漁業を考える機会になる、とこの活動を位置づける。今後も長く継続していく方向だ。

撮影/永野佳世   文/本紙・宮下睦

『生活と自治』2019年11月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。

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