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災害時、誰も取り残されない地域づくりを

施設長の村井香織さん。ホームに隣接する「風の杜ひろば」にはヤギの親子も

2019年秋、千葉県は二度の台風上陸で大きな被害を受けた。社会福祉法人「生活クラブ風の村」が運営する千葉県八街市の特別養護老人ホームでは、15号による暴風雨で周辺一帯が停電、断水。職員は対応に追われた。その時何が起こったのか、その体験から学んだこととは。

電源確保の重要性

生活クラブ風の村特養ホーム八街

「開所から20年たちますが、こんな災害は初めてでした」。「生活クラブ風の村特養ホーム八街」の施設長、村井香織さんはそう話す。
9月9日、三浦半島沖を通過し東京湾を抜けた台風15号は、強い勢力を保ったまま千葉県千葉市付近に上陸した。上陸時の勢力は関東としては過去最大クラスだったという。

特養ホーム八街の厨房設備はオール電化だ。幸い建物に大きな被害はなかったものの、同日午前3時頃から停電、断水し、ライフラインが断たれた。
敷地の入り口付近にはスギ林がある。電線の絡まったスギの木が倒壊し、近くの道路は通行が困難になった。このため、特養ホームの入居者80人、ショートステイの利用者を合わせ100人近い高齢者を宿直の職員で見守ることとなった。

固定電話は通じず、インターネットが使えなくなった。自分たちがどんな状況に置かれているかさえわからず、どんな支援が欲しいか外部に発信することもできない。停電後2日間は、ホーム内にいた職員とどうにか通勤できた職員とで乗りきるしかなかった。

蒸し暑い時期だったことから、停電三日目には体調不良を訴える人も現れた。このころには、「ガラケー」がつながることがわかり、救急搬送のため、屋外の電波がつながる場所を探して、救急車を呼んだ。理由は不明だが、どのスマホもつながらなかった。夜間、暗くて不安を感じたり、転倒の危険性がある入居者は、法人内の他の施設や家族のもとで過ごしてもらう対策を取った。
冷蔵庫が使えず、食材や薬剤などの保存に欠かせない氷は法人内の他の施設や、被災していない地域から通勤する職員が調達した。

停電五日目の13日、電源車が到着し、ホームの電気は仮復旧した。情報の受発信ができるようになり、必要な物資が多方面から届き始めた。「高齢者施設として電源確保の重要性を痛感しました」と村井さんは言う。

体験から学ぶ

生活クラブ千葉は、「自分が住みたいと思える施設をつくる」をコンセプトとして、1998年、特養ホーム建設に向け「生活クラブ風の村」を設立した。特養ホーム八街の開所は2000年。家庭の居間のような共有スペースに複数の個室が面した「個室ユニット型」といわれる設計は千葉県内初の試みで、01年には厚生労働省により特養ホームを建設する際のモデルとして認められた。

ホールや地域交流スペースを備え、広い敷地に建つホームはゆとりのある設計だ。日ごろ入居者は車いすに乗ったままエレベーターで自由に移動する。職員も日常的に使うエレベーターだが、停電により食料や水、生活雑貨などを人力で運ぶしかなくなった。

「台風はある程度予測がつくので、停電になることを前提に2~3日前から物資を防災倉庫から運びだしておく、それも使う場所に運んでおくことが必要でした」と村井さん。排せつ介護に使うペーパー類やウェットタオルの用意が足りなかったことも反省材料だと言う。今回は流通が機能している地域から取り寄せることができたが、広範囲に被災した場合は困難になる。「少なくとも五日分の備蓄が必要だった」と話す。

八街市は水源として地下水も利用しており、ホームの水道は井戸水を活用している。電源が確保され水は出るようになったが、水質検査をすると細菌の数値が通常より高かった。生活用水としては十分使えるが、飲むことも食器を洗うこともできない。高齢者施設の場合、魚だけでなく肉を使った軟らかい食材の缶詰やレトルト食品の備蓄が必要なこと、それらを取り分けるには、平らな紙皿より仕切りのあるタイプが便利なこともわかった。

特養ホーム、デイサービス、訪問介護ケアプラン担当を合わせ160人ほどの職員がシフトを組んで働いている。職員も40人近くが自宅で停電、断水の被害を受けた

地域内の助け合いを

台風から数日するとホーム内は少し落ち着き、職員も通常業務に戻り始めた。一方、地域のライフラインはまだ復旧していない。そこで、在宅介護担当の職員を中心に、地域の在宅高齢者の訪問を始めた。普段特養ホームを利用していない人を含め安否確認をし、話を聞いたり、必要なものを届けたりした。行政も動いていたはずだが、訪問先からは「水が届かない」「情報が入ってこない」という声も聞かれた。

これまでもホームは高齢者を対象とした買い物バスの運行など地域貢献活動を担ってきた。こうした状況に手をこまねいてはいられず、風呂を地域住民に開放したり、支援物資のコメを炊いておにぎりを届けるなど、目の前にある地域の困りごとに一つ一つ対応していった。「手が足りないというので、入居者さんにもおにぎりを握っていただきました。手早かったですよ」と村井さんは笑う。

停電から12日後の9月20日夜間、ようやく電気は復旧。ホームでは、その2日後に電源車からの切り替え作業が完了した。
風の村は現在、高齢者支援事業を中心に、子育て支援や障害児者支援など、千葉県内でさまざまな福祉事業を展開している。今回、こうした法人内の施設間相互の協力に助けられた面は大きい。が、一方で、法人の枠を超えた地域内の協力も必要だと村井さんは指摘する。

「八街市の社会福祉協議会を通じて、日ごろから福祉事業所や市民間の交流があります。非常時には、別の事業所であっても職員が自宅に近い施設で働いたり、市民がボランティア参加できるような仕組みができれば、誰にとっても安心ですね」
今回の体験から新たな社会モデルが生まれるかもしれない。

撮影/御堂義乘   文/本紙・元木知子

『生活と自治』2020年3月号 「生活クラブ 夢の素描(デッサン)」を転載しました。

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